152人が本棚に入れています
本棚に追加
グレアムは少し考える仕草をした後に顔を上げて
『背に腹は変えられないな、いいだろう。しかし失敗したら・・・わかっているだろうね?』
と雀に問いかける。
一見普通の表情なのだがその背後には有無を言わさないような凄いオーラを纏っている。
しかし雀は臆する事もなく
『わかってるわ、どうせもう戻れない身だもの。何処までも行ってあげる』
とグレアムを真っ直ぐ、目線を逸らさずに返した。
その様子にグレアムは『いいだろう』と短く言うと机の中から何かを幾つか取り出して雀へと渡す。
『これは?』
『君の新しい身分証明書と携帯端末、それにサポート用の道具だ』
雀はそう言ったグレアムを一瞥するとまず身分証明書の方を確認する。
『・・・鈴戸 朱莉(すずど あかり)。成る程、これが私の偽名ってわけ?』
『そうだ、時間が無かったから君の名前から一文字抜いた上で入れ替えただけだがな。そしてそれが携帯端末、報告や連絡に使うといい』
グレアムは透明な水色の四角い端末を指差しながら説明する。
雀はそれを手に取り弄りながら使い勝手を確認する。
『そしてそれが一番重要なアイテム、それを使っている間君は大人の姿になる』
『大人・・・ねぇ』
雀は紅い宝石が飾り付けられた指輪を見ながら呟く。
実際どれも雀にとって真新しい物がたくさんだ。
『そしてこれから君はこの少女、「八神はやて」の家にヘルパーとして大人の姿で潜入してもらう。何か質問はあるかな?』
『無いわ』
グレアムの問いに雀はすぐに返すと2人を解放してやる。
『アリアとロッテは常に遠くから動きを逐一監視している。感づかれない為に空けることもあるが何かあったら彼女達に言うといい』
『わかったわ』
『本当ならこんな奴のサポートなんてゴメンだけどね』
立ち上がったロッテは埃を払いながら愚痴るように呟く。
雀はそれを見て鼻で笑った後にグレアムに向き直り
『いつから?』
と短く問いかける。
『明日からだ』
『また随分と急ね』
グレアムの言葉に雀は笑いながら返すとグレアムは苦笑いしながら
『闇の書が近々起動してしまうからな、早めに行ったことに越したことは無いだろう』
と言った後に真面目な表情になり
『・・・頼んだぞ』
と雀の肩に手を置いて言う。その目は真っ直ぐで誠実で、覚悟を決めた目だった。
雀は微笑すると
『了解』
と短く答えるのであった。
最初のコメントを投稿しよう!