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『最近皆の帰りが遅いなぁ・・・』
『そうね』
はやての呟きに朱莉は短く同意しながらも洗濯物を畳む。
『でもそれだけあの子達にも楽しみが増えたんでしょ。戦うだけの毎日を送っていた頃より大分進歩したじゃない』
『せやけど~』
納得がいかないのかうだうだとカーペットの上をゴロゴロ転がるはやて。
あれから一ヶ月近く経った。はやての容体はまだ入院する程ではないが着実に悪い方へと向かって行っていた。
現在守護騎士達はこの家にいない。
シグナムは近くの剣道場へ行き、ヴィータはおじいちゃんおばあちゃん達とゲートボール、シャマルはザフィーラの散歩がてら買い出しに行っている。
・・・名目上は。
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『命の、危険・・・?』
『はやてちゃんが!?』
はやての主治医である石田幸恵から放たれた言葉にシグナムが聞き返しシャマルが驚愕の声をあげる。
石田先生は頷いた後に
『はやてちゃんの足は原因不明の神経性麻痺だとお伝えしましたがこの半年で麻痺が少しずつ上に進んでいるんです』
『麻痺が上に?』
朱莉の問いにはい、と頷いた後に深刻な表情で続ける。
『この二ヶ月は、特に顕著でこのままだと内臓機能の麻痺に発展する危険性があるんです』
石田先生の話は三人にとって衝撃的であった。いや、正確には二人だ。驚愕して石田先生の話を聞いていた中、朱莉だけ冷静に聞いていた。
『くそっ!何故、何故気づかなかったんだ!』
『ごめんなさい!私、私のせい『違う!自分に、言っている・・・!』』
泣きながら謝るシャマルにシグナムはそれを遮って自分を攻める。
『闇の書の侵食・・・まさか蒐集しないとこうなるなんてな』
朱莉は悲しげな表情で呟くがこれは演技である。
朱莉は知っていた。知っていて何もしなかった。
しかし彼はこのまま見ているだけで終わるつもりはなかった。罪がある者だったら容赦なく見捨てるがこの少女は違う。なんの罪もない少女が死ぬのを見ているだけの朱莉では無い。
(あの時の借りもあるからね、しっかり返させてもらうわ)
朱莉は心の中でそう決心するのであった。
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