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「あら? 響君、昔より大人しくなった? 前はもっとやんちゃで、触れるものは皆、ガラスのナイフで傷付けるような危ない空気を纏っていたような気がするのだけど?」
「人を昔の不良みたいに言わないでください……」
「意外に古臭いことを知っているのね。見た目は高校生、実年齢は三十代だったりするのかしら?」
「その言葉、先輩にはそのままブーメランになる気がするんですけど」
「ひどいわ。響君ったら、私が年増の売れ残り女だとでも言いたいのね? 確かに大人びて見られることは多いけれど、よく知っている響君に言われたら少なからず衝撃を受けるわ」
「いや、だから、そんなつもりは……」
「うふふ」
緊張を解してくれているつもりなのだろうけど、先輩の口調が穏やかなせいか、かえって返す言葉がなくなってしまう。
「祭先輩、響をからかうのもいいですけど、この朴念仁は冗談を冗談とも思えないし、まったく融通が利かないので、早めに本題に入ってあげた方がいいと思うんですよ。本来なら私と先輩がガールズトークを楽しむところを、響なんて連れてきて場を壊してごめんなさい」
ちはるさん、フォローを入れてくれるのはありがたいけれど、出来れば他の言い方をしていただければ。
「そうね。貴重な時間をお借りしているわけだし、手短に話をしましょうか」
緊張がピークに達した。僕達二人を呼び出すほどだ、よほど困っているに違いない。
「来週の学芸発表会、響君と片野坂さんに手伝って欲しいの」
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