深層ジェミニゾーン①

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    「学芸発表会、ですか?」 僕達の通っている私立旭ヶ丘芸術学園には、文化祭や体育祭などの高校として一般的な催し物以外にも、年数度の学園の特色あるイベントがある。 学芸発表会もそのひとつで、毎年一学期には全校の文化部が、それぞれの部の宣伝も兼ね、様々なデモンストレーションを全校生徒や来賓客の前で披露する。 ただ参加するのは文科系の部活だけで、運動部には関係のないイベントだし、ましてや生徒会が何かしらの見世物を行なうなど、少なくとも僕は聞いていない。 「響君は相変わらず、最後まで話を聞く前に妄想するのが得意なのね。誰も舞台で踊れとか、歌えとか、そういうことをお願いしていないわよ?」 「えっと、じゃあ、学芸発表会で何をすればいいんですか?」 「校内イベントのときは、大体、私達生徒会が裏方をすることになっているの。中学のときも、運動会の運営委員を受け持ったりしていたでしょう? 舞台設置や当日の進行が私達の仕事ね」 「ああ、そう言えば……」 去年の学芸発表会では、それこそ祭先輩がマイクを使ってプログラム進行をしていたっけ。 言われてようやく思い出すけど、それに伴って少しがっかりしたような気持ちになる。 「僕達に当日の仕事を手伝えということですか?」 「まさか。私達が担当する当日の仕事は、それこそ進行役くらいしかないわ。二人に手伝って欲しいのは、前日までのセッティングね。大した仕事じゃないから、そんなに手を煩わせることはないわ、せいぜい一日一、二時間ってところかしら」 祭先輩が大したことじゃないと言うのなら、本当に大したことはないのだろう。 がっかりしたのは、その「大したことのない用事」の為に、わざわざ僕達の力を借りようとしたことだ。    
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