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僕の記憶の中の祭先輩は責任感が強く、少し壁にぶつかったくらいじゃ他人を頼ろうとはしなかった。
頼ることが少なからず他人との軋轢を生み出す要因になることを解っていたからで、中でも他人と関わることをよしとしない僕の前では常に完璧な先輩として振舞っていたし、僕の性格もよく知っていた。
祭先輩も昔に比べて変わったということか。
そう思うしかないし、過去にお世話になった事実は変わらない以上、どれだけくだらない頼み事でも断れない。
単純に僕の価値観……いや、先入観の問題か。
では大したことのあるお願いとは何なのかと問われれば、その答えを僕は持ち合わせていないし、そもそも信用を置いているから僕達に頼もうと思ったと思うことこそが、明らかに僕の先輩に対する思い込みだ。
結局、雑用程度だから、僕達でも充分と判断しただけ。それならそれでいい。
僕らしくなく、人の為に頑張ってみようという気持ちを持ったことが浅はかだっただけだ。
「どうして私達に? 生徒会には他にも沢山、所属している会員さんがいるじゃないですか」
「ええ、それなのだけれどね……」
ちはるが質問すると、祭先輩の眉間にしわが入った。
「全員休んでいるのよ。不慮の事故と言えばいいのかしら?」
『不慮の事故?』
僕とちはるの言葉が重なる。
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