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「ええ、偶然の怪我や病気が重なって。本当は部外者に頼むべきじゃないのよね。たかだか、プログラム表の準備や各部活の機材移動を手伝うくらいだったから、人手も充分足りていたし、来週に向けて順調に準備は進んでいたの。昨日までは」
『昨日まで?』
再び僕達の声は重なる。
「え? でも私、昨日先輩に協力をお願いされて?」
「即座に応援が必要だと思ったの。思い浮かんだのが片野坂さんと響君だけだったから。迷惑なのは重々承知だけど、流石に人的問題の上に時間的猶予がないとなれば、私の努力だけではどうにもなりそうにないし」
つまり先輩は、瞬時に僕達への協力要請を決断したわけだ。
流石と言わざるを得ないし、僕達が信用に価するとか、そういうことを気にすることが的外れなくらいに切羽詰まった問題だったということだ。
僕の中で、それを協力に前向きになる為の理由とし、納得することにした。
「無理にとは言わないし、無償でもないわ。一応、生徒会予算の中から昼食代を提供することくらいは出来るし、それでも足りなければ個人的にもお礼をしたいと考えているの」
「何を言っているんですか、堅苦しいなあ。先輩が困っていると聞いて、この私が協力しないわけないでしょ?」
ちはるは目を輝かせながら、胸を勢いよく拳で叩いた。
直後に激しくむせていなければ、頼りがいのある姿だっただろう。
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