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「良かったねぇ、響。先輩との距離がぐっと縮まったじゃない。祝杯のビールでもどう?」
「なんだよ、そのいやらしい笑みは! って言うか、その水筒の中にはビールまで入ってるのか?」
「ノンアルコールですがねぇ」
両手で、のーさんきゅーの合図をして見せると、ちはるは不満そうに頬を膨らませる。
「本当、冗談が通じないなあ。で、どうする?」
「どうするって?」
「響と二人きりで外に出るなんて、最近なかったことじゃない? 折角だから、どこかで遊んでいこうか?」
何が折角なのか、よく解らない。
祭先輩の頼み事には、過去のお礼と久しぶりに会うという二つの理由で付き合えるが、家も近く、よく顔を合わせるちはるとは「折角」と呼べるほどの、遊ぶ理由がない。
「面倒だし、もう帰るよ。お前は僕と違って、沢山友達がいるだろう? そいつらを誘えばいいじゃないか」
「うわ、何それ。人が気を遣ってあげてるのに。今ならはちみつレモン、水筒二本分付けてあげるけど? 何なら、響が大好きな苺ショートなんて奢っちゃうけど?」
「い、苺ショートか? そ、それなら……あ……電話」
流石に苺ショートには心が揺らいだが、「予想外」の連絡が電話に届いた為に、なんとか思いとどまる。
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