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不良同士の喧嘩。
女友達の色恋沙汰。
関わらなくてもいいものに、わざわざ自分から関わろうとするこの幼馴染のせいで、僕も昔からよくトラブルに巻き込まれたものだ。
中学時代はそのたびに、先輩がフォローしてくれ、大問題に発展するのを防いでくれていた。
もっとも、今回祭先輩がちはるに「頼み事」をしたのは、ちはるのその正義感を見込んでのことだろう。
そうじゃないと、人には決して頼ることのなかった祭先輩が、僕達を呼び出すことなどあり得ない。
いや、ちはるの正義感は今に始まったことじゃないし、今まで祭先輩が協力を仰いできたことなど一度もなかったのだから、今回はそれほど切羽詰まった重大な頼み事だと考えるべきか。
「ほら、先輩が怒らないように、そろそろ行くぞ。お前のせいで既に三十分は遅刻なんだからな」
「ああ、大丈夫、大丈夫。こういうこともあろうかと、最初から祭先輩との約束時間は、遅刻前提で組んであるから」
「おっと、こんなところに殴りやすい後頭部が」
「いたっ!」
誰よりも価値観の共有できない女と幼馴染であることを呪いながら、僕は祭先輩が待っている図書館に向かった。
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