おばあちゃんの記憶

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テレビを見る。と言っても、田中のせいでうるさくて聞こえないし、シャンプーを探してわりと時間が経ってしまったから、もう何をやっているのかまるでついていけない。 「あー、あー、いいところだったのに・・・」 しかたなくチャンネルを闇雲に変えていく。正直、もうどうでも良くなっていた。チャンネルは一巡、二巡としていく。それでも決まったチャンネルに定まらないのはそのせいだ。 一度、テレビの電源を切る。 「消費税も上がったしね。電気代がもったいないよ」 老婆はかねてから消費税に不満を持っていた。誰に話すわけでもないのに、つらつらと不満を述べていく。 その時だ。さっき聞こえた虫の音がした。 カナカナカナ。 「あれ、まだ虫がいるよ」 そう言ってさっきの棚を見る。 カナカナカナ。 しかし、音は違う方向から聞こえてくる。 「どこだい?」 ちょうど棚に殺虫剤があったから、それを手に取り虫を探した。 「いないねー」 音ははっきりと聞こえてくる。耳障りでしかたない。一度気になってしまうとどうにもできない。 「あー、イライラするね」 耳を澄まし、虫の位置を探る。 カナカナカナ。 近い。この音の感覚はとても近い。蚊を探すような感じで、ふんわりと視線を動かす。こちらが見つけたことを悟られてはいけない。老婆は虫に意識でもあるかのように振る舞った。
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