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衣の音を歯ごたえと共に楽しむ。それが楽しくて買ってきたコロッケなのに、今日はそうもいかない。耳障りな虫の音。
それがさっきよりも遥かに大きくなってきたのだ。
「うるさいよ」
そう言ったところで虫の音は止まない。激しさを増すばかりだ。
「どこだ?!」
床にあった殺虫剤を手に音がしてくる方向を探す。が、なかなか見つからない。しかたなく、部屋全体に殺虫剤を撒く。
それから慌てて、両手を振った。思わず、飲みかけのビールとコロッケの上にまで殺虫剤を撒いてしまったからだ。
「あわわわわわ」
会社から帰ってきて、いったい自分は何をしているのだろう。そう後悔している間にも虫の音は続く。激しく続く。
「うるさいって言ってんの!」
そう言う自分の姿が、ガラスに映り、とても滑稽に見え止めた。
「どこにいるんだ?」
まるでわからない。右かと思えば左。上かと思えば下。そんな感じなのだ。
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