1章

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 今度は名前に力が込もった。特に“シェ”に。 「ふ、ふ~ん?そうなん」 「…ラルクで構いませんので」  どうやら彼は、彼女が名前を覚える気がないと云うのに気付いたようだ。 「あっ、そう?」  誤魔化すような笑みを浮かべる彼女に、彼は苦笑いを浮かべた。 「へ~ラルクって云うんだ~私は妖霊谷のルリ。宜しくね~」  蜂蜜色の髪の少女が名前を言って、右手を差し出した。  そう、名前を言って。  ここでは何処の誰の名乗るのが普通である。ラルクのように長い名前だけをいうのは非常識である。 「うん?宜しく」  頭にクエチョンマークを浮かべてはいるが、ちゃんと手は握り返した。 (何処の国から来たんやろうか?)  全く素性の知れない彼を二・三度上から下まで見た。  他の国の人が偵察目的に来たのなら、こんな派手な格好はしないだろう。ラルクの姿では一発で此処の人でない事がバレてしまう。  では、一体彼は何故此処に来たのか?  彼女は顎に手をかけて首を傾げた。
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