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今度は名前に力が込もった。特に“シェ”に。
「ふ、ふ~ん?そうなん」
「…ラルクで構いませんので」
どうやら彼は、彼女が名前を覚える気がないと云うのに気付いたようだ。
「あっ、そう?」
誤魔化すような笑みを浮かべる彼女に、彼は苦笑いを浮かべた。
「へ~ラルクって云うんだ~私は妖霊谷のルリ。宜しくね~」
蜂蜜色の髪の少女が名前を言って、右手を差し出した。
そう、名前を言って。
ここでは何処の誰の名乗るのが普通である。ラルクのように長い名前だけをいうのは非常識である。
「うん?宜しく」
頭にクエチョンマークを浮かべてはいるが、ちゃんと手は握り返した。
(何処の国から来たんやろうか?)
全く素性の知れない彼を二・三度上から下まで見た。
他の国の人が偵察目的に来たのなら、こんな派手な格好はしないだろう。ラルクの姿では一発で此処の人でない事がバレてしまう。
では、一体彼は何故此処に来たのか?
彼女は顎に手をかけて首を傾げた。
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