~古書とアイスコーヒーと鈴の音~

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まっすぐな瞳が僕を見上げてきた。断る理由なんか、ある訳ない。 頷き、笑う。 「…拓夢だよ」 「たく、む……。素敵な名前ですね」 笑い合う僕らの側で、振時計がカチリと呟いた。 次に、正時を告げる鐘の音が鳴る。 僕と麻衣は、驚き時計を見上げた。時刻は4時。だが今は、まだ昼前の筈だ。 「時間を合わせるの、忘れちゃった……」 再び照れ臭そうに笑う麻衣に、僕もまた笑った。 「今度は手伝うよ。……麻衣ちゃん」 聞いてから初めて口にした彼女の名前。僕は自然に言えていただろうか? 頷いた麻衣は、嬉しそうに見えた。 「お願いします」 でもそれは、僕の欲目かもしれない……。  
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