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「アンティークものを躊躇いなく普段使いなんて、贅沢だね」
「食器は使うものですよ」
「そうだけどさ。アンティークの皿やカップとかって、棚に飾っておくものだと思ってたよ」
「珍しかったらそういう時も。でもこれは違いますよ、ただ古いだけ。うちには昔からこういうのが沢山あったんです……お祖父ちゃんが馬鹿みたいに集めるものだから」
「だからこの店にも?」
ぐるりと店内を見渡した僕に麻衣は「はい」と頷く。
「このお店はお祖父ちゃんの趣味の塊だったんです。私は小さい頃“宝箱”って呼んで入り浸ってました」
懐かしそうに細む目が過去を巡っている様だった。
彼女が祖父亡き後この店を守っている理由がその目に表れていて、見ていると僕の頬は自然と緩んで……
「僕も好きだよ」
つい口も緩んでしまう。
しかし、それは言葉が唐突過ぎた上、色々誤解を招きそうな一言だった。
「え?」
――不味い。
「あ、いや!この店の雰囲気が…さ。なんか凄く懐かしさを感じるっていうか……。でも、不思議だよな……和洋折衷集められた骨董がカオスで独特な雰囲気なんだけど、それが妙に落ち着くとか」
誤魔化しついでの感想とはいえ、そこに嘘など無かった。
以前の古書店の時から店の雰囲気に惹かれてはいたが、麻衣が手を加えこの状態にしてからはよりそれが強くなった気がする。
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