~古書とアイスコーヒーと鈴の音~

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そんな嬉しい状況に何度も遭遇していたのに、性懲りも無く僕は短所っぷりを発揮してたというのか……。 この店に通っているのは正直なところ彼女に会うためだ。珈琲と古書はそのおまけの様なもの。それなのに、おまけに熱中して本命をほったらかしとは――どうなんだ、自分。駄目もここまでくると救いようがない。苦い経験をちっとも活かしきれてない。 「ごめん、麻衣ちゃん。まさかここでもそんな事してるなんて……」 「面白かったですよ?夢中になってる二宮さん、本を読むからくり人形みたいで」 クスクス笑われ僕は肩を竦めた。麻衣が表現する自分の様子が想像出来る。ページをめくる以外動かない手、一定の間隔でアイスコーヒーを口にする姿。成程、確かにからくり人形みたいだ。 「いい加減改めないと駄目だなぁ。今日だってそれで失敗してるのに」 「今日も?」 頷く。傍らに置いている鞄に詰まった本を見せ苦笑した。 それだけで事の顛末は伝わったようだ。彼女も僕へ苦笑を見せ「ああ、だから」と呟いた。  
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