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星が、綺麗な夜だった。
今日も夜空を見上げて君を想う。
あの場所へ残して来た、この世の誰よりも愛おしい人。
いつからだっただろうか。
なんでもないこの空が、酷く輝いて見え始めたのは。
僕には君が眩しくて仕方がなかった。
幾度と無く汚してきたこの手を、温かいその手で握ってくれた。
僕は独りではないのだと、何度も教えてくれた。
今は会えないその人に思いを馳せる。
こんなに穏やかな気分でいられるようになったのも、全て。
君がいてくれたから。
「君も、この夜空を見ているのかな」
愛しいその人へ向け、小さく微笑む。
そのときだった。
ドタドタと大きな足音が聞こえ、振り返るとそこには息を切らした御陵衛士の隊士の姿があった。
伊藤先生が、と息も切れ切れに言う。
その言葉を聞いた瞬間、目の前が真っ暗になった。
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