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突然始まった戦闘に遅れを取らないよう、すぐに刀を引き抜いた。
かつて仲間だった筈の隊士を何人も斬った。
その感触が伝わるたびに手の震えが増していく。
「ぐっ……あ………」
突然自分の体が何かに押されるような感覚がして。
気がつけば目の前には夜空が広がっていた。
斬られたのか、と。
余りにすんなりと受け入れられたものだから、自分でも驚いた。
死ぬときは痛いのか、とか
恐怖は感じるのか、とか。
よくそんな事を考えていた。
痛みは不思議と感じない。
体が麻痺したように動かないけれど。
恐怖、か……。
思っていたよりも心は穏やかだ。
今も君の事を想っているからだろうか。
今までどんなに離れていても、一日だって思い出さない日は無かった。
毎日毎日、会いたいと焦がれた。
目の前に現れる幻の君に手を伸ばすけれど、それをすればすぐに消えていく。
それでも何度も手を伸ばし続けた。
目が霞むからか、その空は数刻前に見たものより何倍も綺麗に見える。
どのくらいの時間がたっただろうか。
どちらの勝ちで終わったのだろうか。
それさえもわからなかった。
辺りはすでに、小さな物音一つ聞こえない静かな場所と化していた。
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