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「遅いですね……」
「社長が電話をしないと出ないとは、なんたる不届き者でしょうか」
秘書らしき女性の声を聞き、スーツを着た細身の男は、"公園"を見つめてふぅっと溜め息をついた。
──『九龍寨城(きゅうりゅうさいじょう)公園』
昔の名前は『九龍城砦』
1960年~70年代。
無計画な増築による複雑な建築構造。
英国の租借地から例外として外され、飛び地となった過去を持つ。
国の主権も及ばずに半ば放置された環境で、多数のバラックが無計画に増築され続け膨れ上がった。
上水道も下水道も電気もひかれたが、住民達はお構い無しで他から電気などを引っ張り建物の中のインフラは滅茶苦茶だった。
その建物には全盛期、5万人もの人間が住んでいた。人口密集密度は世界一と言われ、畳1枚に対して3人の計算。
『九龍城砦』は『東洋の魔窟』と呼ばれ、世界最大のスラム街と化していた。
しかし、その名残は一切無い。
「奴と会うのは正直気が引けるが、土地開発の為には話がを聞く必要がある」
「その為にわざわざ日本から来たんですよね……」
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