『タイムリリースプロローグ』

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 コケにされた二人は、一気に間合いを詰めて男を拘束しにかかった。 「死」  背後から肩越しを狙い迫るナイフ。男は振り向きもせずに半身で避ける。 「為什麼!!」 「アハハマキトさんジョウダンデショウ」  イェンロンは初めて振り向き、ナイフを持つ男の腹部に『ドゴンッ』という鈍い音が。 「ぐほ、ごほ」  膝蹴り一発のはずだが、功夫(カンフー)を使いこなす男のケリは強烈だった。 ──詠春拳(えいしゅんけん)  昔に実在した映画俳優が始祖となる『ジークンドー』  その元となる中国に古くから伝わる武術であり、決して見せかけだけの拳法ではない。  膝から崩れたカーキジャンパーの男。もう一人の白Tシャツは、驚く様子も無くのそのそとやってきた。  よほど腕に自信があるのだろう。 「ああ、ナンデモナイデスヨ。ちょっとだけマッテテクダサイ」  イェンロンは初めて白Tシャツと目を合わせた。そしてゆっくり携帯をチャイナ服のポケットに仕舞い込む。 「死了」
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