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「あぁ、すいません。ありがとうございます。」
彼女はにっこりと微笑むと、僕から目を逸らした。
僕とは住む世界が違うような、そんな小綺麗な服装。きっと、恵まれて育ったのだろう。僕だって、同じ環境だったならそんな風に振る舞えるのだ。彼女が僕と同じ環境だったなら、彼女も今のようには振る舞えまい。
見苦しい嫉妬が内を渦巻いて行く。周囲の奴らは、皆恵まれている。僕だけが、世間から迫害され、取り残されているのだ。抗おうにもそんな気力も出てこない。
カーネギーならどうするだろう。いや、そんな考えはこれっぽっちも建設的じゃない。
もういい、結局全て終わるのだから。
会社に着くと早々に怒鳴られた。僕のせいではない。ただ、僕に当たりたいだけなのだ。それを見て指差す彼らも、話題が欲しいだけなのだ。
しかし、上司の小言も、得意先からの罵倒も、同僚からの蔑みも。それら全てが、今日で終わる。
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