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また、日が変わる少し前に自宅へと辿り着いた。
そこには、目当てのものが届いていた。この人生を終わらせる為の道具が。下調べは完全に済ませた。
その時が直近で最も活きていたのではないだろうか。死ぬ手段を考えている時が、最も晴れやかであった。
・・・後は、机に広げた大量の薬を飲み込むだけだ。部屋に散乱していた物は全て片付けた。死に支度は整えたのだ。
出来れば痛みは伴いたくない。周囲の好奇の目に晒されて死ぬのも御免だった。全てを考えて、これを選んだ。今更迷うことはない。
それなのに、どうにも手が震えてしまう。カタカタと音を鳴らす程に、言うことを聞かなかった。
死ぬことすら出来ないのか。ふと、堀井の顔が浮かぶ。僕よりも先に、どうも呆気なく逝ってしまった親友。僕なんかよりも、遥かに光り輝く人生を謳歌していた男。
意思に反して涙が零れ落ちる。安らかな気持ちになどなれやしないではないか。厭世的な気分は晴れることなく、とてもとても、深く暗い。
だから、僕は大量の水とともに全ての薬を飲み込んだ。すぐに意識は朦朧とし、瞼は静かに閉じられた。
短い生涯だった。恵まれなかった青年は、やっと自ら命を絶ったのだ。
こうして僕の人生は、終わりを告げた。
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