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船に乗っていた。決して豪華ではない。酷く傷んだ木製の小舟。 「よう、大島。」 「あぁ、堀井か。」 「元気だったかよ、やけに久しぶりだなぁおい。」 ハキハキと溌剌に喋りかけてくる。声量は大きいが、声音は優しい。彼のそれは不思議と、心地の良い声なのだ。 小舟の心配など吹き飛んでしまった。彼と一緒なら、恐らく平気だ。彼と一緒なら、どこまでだって行こう。 「この船には、屋根が無いんだね。」 一瞬、自分の声に驚いてしまう。自分自身でも久しく聞いていなかった様な、不思議な気分に浸る。 堀井は、船の向こうの薄暗い世界を眺めながら応える。 「あぁ、そうだな。屋根なんか必要ねぇからな。」 「そうだったんだ。」 僕も、堀井が見ているのと同じ方へと目を遣った。そこには闇しかなく、何も見えることもない。それでも堀井は、一心に外を見続けた。 「闇しかないんじゃない。闇があるんだよ。闇の奥になにがあるかなんて、恐れる方がバカらしい。」 そう言うと、彼は豪快に笑った。
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