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少女の言葉にハッとする。彼女は辿々しいながらも、たった一人で自らの意思で歩みを進めていたのだ。
「そうかい、気をつけるんだよ。」
「お兄さんも、何かを探しているの?」
「いや、僕は・・・何も。」
言葉に詰まり、答えが出せなかった。悔しさと恥ずかしさでいっぱいだった。彼女の道を邪魔してしまったと、後悔だけが残る。
「そうなの。でも、目が見えなくても、すぐに見つかるわ。」
そう言うと少女は元気に走り去ってしまった。
酷く落胆してしまう。あの盲目の少女よりも、世界を見えていない事が、どうにも腹立たしかった。少女にではない、自分に対する憤りを感じて俯いてしまう。
何故だろう。何故こんな気持ちになるのだろう。彼らは皆、何か目的があるのだ。それなのに、僕はただ此処にいる。その事実が僕を苦しめ、何とも居心地が悪い。少女は既に闇の彼方へと消えていた。船の奥へと行ったのか、それとも老人のように行くあてを見つけて歩んだのか。この船はどこまで続いているのか、好奇心はあるものの、どうにも足は進んでくれない。
少女にすらできたことを、僕には出来なかったのだ。一歩を踏み出す勇気がなかった。
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