有象無象

2/7
前へ
/35ページ
次へ
「堀井、死んだんだって。」 電話口からの言葉に耳を疑った。あの豪快で明朗な男が死んだ? 「事故に遭って、即死だってよ・・・」 加藤の言葉は少し震えていた。悪い冗談だと、笑い飛ばせはしない雰囲気だった。 「どうして・・・あいつが・・・」 どうしてあいつが、俺よりも先に。 「本当だよな、数少ない親友だったのに・・・」 涙が頬を伝う。二年間会っていない旧友に先を越されてしまったのだ。悔しさに拳を握りしめる。 「とにかく、お前んとこにも連絡あるだろうから、しっかりしろよな。」 加藤が励ましの言葉をかけてくれる。僕にとっては的外れなものだ。そんな心配など必要ないのだ。僕は僕のことで精一杯で、生への羨みなど皆無なのだから。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加