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相変わらず船の全貌を見ることは叶わない。それが出来ないこともわかっているから、しようとも思わなかった。ここはただ、自由な空間なのだ。老人も少女も、少年も。全てを受け入れ、目指す場所。 「こんばんは、あなた方はどこまで?」 するとまた、突如現れた者に話しかけられた。彼が近づいていたことに一切気がつくこともなかった。その青年は座っている堀井の脇の通路に立っていた。彼は軍服を身に纏い、どうにも酷く憔悴した顔をしている。 「僕たちは・・・どこに向かっているんだろう。」 思わぬ問いに首を傾げてしまう。今まで何とも思わなかったのだ。ただ、此処にいた。 「俺たちは、ただ見てるだけだ。向かってるわけじゃない。こいつを連れてくわけにはいかないからな。」 「そうでしたか、先の戦争では、随分酷いことになりました。」 「あぁ、そうみたいだな。あんたを見りゃわかる。」 そう言われて彼の姿を見ると、唖然とした。実に紳士的に振舞っているが、彼には右の半身がないのだ。
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