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「お国の為でしたから。私の友人は海に沈んだり、私よりもずっと恐ろしい目に遭いました。あれが遺したものは何だったのでしょうか?」 「何もない。後悔だけだ。」 彼の問いに、堀井はぶっきらぼうに答えた。その真意が読めずにいて、不安が過る。人に対してこんな接し方をする堀井は初めてであった。それでも青年は態度を崩すことなく、話を続けた。 「やはり、そうでしたか。口に出せずとも、当時からずっと思っていましたから。私は今母上に、会いに行くところなのです。」 「そうか、気をつけてな。」 「ありがとうございます。あなた方も、お気をつけて。」 そう言うと彼は目を細めて遠くの外を見遣りながら言った。 「そろそろ、鬼の淵ですね、それでは。」 器用にも、半身のみでこちらに礼をすると、くるりと反転して去って行く。 恐怖はない。彼への同情だ。あまりに、無情だ。堀井がどうして彼にあんな態度をとったのかはわからないが、彼もまた、僕と同じことを思っているだろう。彼の人生は光り輝くものであったはずなのに、服よりも大事な身体を失ってしまったのだ。
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