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葬式も終わり、帰り支度をしている時に、加藤から声をかけられ呼び止められた。
「大島・・・お前さ、大丈夫かよ?」
「なにが?」
「いや、なんかこう、あんまり元気なさそうだったからさ、なんとなく。」
「いや別に、大丈夫さ。」
「そうか、なら良いんだけど。」
相変わらず察しが良い。加藤はいつも周囲の人間を気にかけている。僕なんかも漏らさず。
でも、決めたからには晴れやかなのだ。その心配などご無用だ。
「ただいま。」
帰宅すると、何時もの様に誰もいない部屋に向けて言う。誰もいなく、何もいない。機械的に繰り返す動作は、壊れてしまった証拠だったのかもしれない。
辛かったのだ。生きているのが。何の意味も見出せずに、毎日をただ繰り返すことが。何の希望もなく、生にしがみつくだけの日常が。
会社に行けば理不尽な上司に朝から怒鳴られ蹴飛ばされる。日が変わる少し前に家に帰ると、雑多な汚い部屋に辟易とさせられる。何をするでもなく、死なないために食べ、明日の為にすぐに寝る。
こんな生活のおかげで、この二年間で十キロは痩せてしまった。物で埋れた机の端に置いてある写真を見て苦笑いする。
堀井、加藤、僕の三人で肩を組み、満面の笑みでこちらを見ている。
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