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あの頃は、夢に溢れていたのだ。全てが輝きに満ちていた。数年前の自分が、今の自分と出会ったら落胆するだろうと、そう思うと自責の念にも駆られる。
「あの頃は楽しかったなぁ・・・」
その呟きは虚空に吸い込まれるようにして消える。何の変化もなく、何の面白みもない。死なない為に生きている。ただ、それだけだ。動物や植物のように。否、それ以下なのかもしれない。生きてはいても、活きてはいないのだ。
カーネギーが言っていた。
「私たちの多くは、かつて自分が思い描いた以上の勇気をもっている。」
彼の著書を最初に読んだのは大学二年生の時だ。非常に感銘を受けた覚えがある。この節だけで、その本を読んで良かったと思えるほどに、その言葉から勇気をもらったのだ。今でこそ、彼の著書が役立つ時のはずなのに、現実そうはいかないのだ。
ふと、涙が零れ落ちてくる。
原因不明の涙は、止めどなく溢れでる。雑然とした心は何を思うでもなく、空っぽのはずなのに。旧友を亡くしても流れなかったものが、堰を切ったように流れ落ちる。
嗚咽を漏らしながら、声を上げて泣いた。
大の大人が、恥ずかしげもなく咽び泣いた。
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