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一瞬、夢かと思った。
けどその直後、現実なんだって悟った。
“もう、治療法は臓器移植しかない”
昨日の晩、主治医だった先生にそう告げられた。
先にその話を聞かされていたらしいお父さんとお母さんは、泣いていたんだって…すぐにわかる程真っ赤な目をしていた。
この病院に入院してどれくらい経つだろう。
けど、一向に検査値は良くならなくて。
もしかしたら…って、予想はしてた。
覚悟はできてたんだ…。
それなのに…
いざ正面切って言われると、辛いな。
医者の言葉だから、実感が湧かなくても現実味がありすぎる。
一緒に頑張りましょうって言われた時は、まだ諦めないって。
そう思えたけど。
法律が改正されたとはいえ、15歳以下の臓器移植の症例はまだまだ少ない。
。
それに加え、ドナーが見つかる可能性もほんのわずかで。
それは医者にどうにかできる問題じゃなくて…
ああ、もう無理なんだって…
誰も何も言わない診察室で、ただただ涙が溢れた。
拭っても拭っても、きりがない。
曖昧にできていた予想も覚悟も、この涙を止める役には全然立たなかった。
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