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神の涙ねぇ… 、大層な名前にしたもんだ。そんな事を考えていると、テオが玄関の扉を抑え、俺を待っていたので、ありがとうと礼を伝えて中に入った。
「ようこそ、神の涙へ!ちょっとうるさい所だけど気にせず適当に座って待ってて!」
テオの言うとおり、ギルドの中には酒場も併設しており、まだ昼前だというのに酒盛りをしているおっさんや、これから行く依頼の話し合いでもしているのか、ああでもない、こうでもないと言い合う人たちの喧騒で溢れていた。
「それじゃ僕はマスターに君の事を伝えてくるから」
そういい残すと、テオは颯爽と二階へ上がる階段の方へ消えてしまう。
おとなしく待つ以外に選択肢はないので、空いていた席に座り、テーブルに突っ伏し、今後について漠然と考えてみる。
自分の身分や出生などについてはしばらくは記憶喪失を貫けば問題ないだろう。
1番の問題は衣食住に関してだ。
住む所に関しては最悪野宿でも気にしない。
着る物にしても、死んだ時のままの服装、即ち制服を着ている。まぁ、体が小さくなったせいでダボダボだがこれもまぁいいだろう。
問題は食べること、物を買うにしてもお金がないし、狩りをする武器もない、野草などもあるにはあるが生息地域には魔物もいる。
やっぱり金がいるな。
ギルドで働けるのが1番いいんだろうが身分証明が必要ならアウトだ。
どうにかならないものか…。と頭を捻らせている俺に横槍が入る。
「お嬢さん、あなたテオの知り合い?」
声の主は茶髪のボブカットに茶色の目、歳で言えば25歳くらいの綺麗な女性だった。
ヨーロッパ系の顔ってなんでこう誰も彼も整ってんのかね?
「私の顔に何かついてる?」
あまりにもぼ~っと顔を見すぎたらしい。
「すっ、すいません!綺麗な人だな~って見とれてました!」
慌てて言葉を返す俺に女性は優しく微笑むとこういった。
「嬉しいこと言ってくれるのね、あなたも可愛いわよ?」
男…いや、元男としては可愛いと言われるのはどうにも喜べなかった。
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