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「危ない!!」
俺の真後ろでそう叫ぶ声が聴こえたと思った瞬間、その声の主は俺を押しのけ通りに飛び出した。
少女へ向けて一目散に走る茶髪の男の後ろ姿だけが見えた。
だがその視界がゆっくりと倒れていく。
先程まで俺は今から起こるであろう少女の事故に脳内がパニックになり、ただ呆然と信号待ちの先頭に立ち尽くしていたのだ。
当然、いきなりの事態に踏ん張れるわけもなく、俺は男に押された勢いで道路に向けて転倒する。
そのような自分の状態すらうまく脳内で処理できず、ただ少女と男の行く末に注目していた。
男は対面の歩道に少女を突き飛ばすことに成功する。しかしその男に向かって乗用車が突っ込んでいる。
男が轢かれる
そう思った瞬間、男の姿が光となって消えたのが見えた。
一体何が起こったんだ?
脳の整理が間に合わない 。目の前で起きた事態の理解に必死になっていた。
自分の状況も忘れて
「危ない!!」
「まずいですよ!!!」
今度は知ってる声、木村と遠野の声だ。一体何を叫んでいるんだ?
そんなことを考えていると急に視界が一段階暗くなる。今度はなんだ。なぜ急に影が覆ったのか、顔あげるまでの時間が、ひどくゆっくりと感じられた。
そうしてこの景色がつくられたのだった。
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