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「起きて下さい、田所さん!起きて下さい!」
誰かの優しい声、それに目を閉じていても眩しいくらいの光を感じて目を覚ます。
「お目覚めになられましたね、田所佑都さん」
目を開くとそこにはそういって優しく微笑む綺麗な女性がいた。
ゆるくウェーブのかかった金髪、綺麗に俺を反射する青い澄んだ目。
がしかし、このような美女、見覚えがない。それなのになぜ相手は俺の名前を知っているのか。
目を覚ましても状況整理が追いつかず、頭の中がグチャグチャだ。
状況整理、といえばここはどこだ?なぜ俺はこんなところに?確か俺はあの大型のトラックに轢かれて…
「そうです、貴方は死にました。」
美女が俺の思考の代わりに告げる。
「そうか、やっぱり死んだか」
なぜか自分が死んだという事実はすんなりと胸に溶け込んだ。
死んだとするならば、この空も地もない飲み込まれそうな、それでいて包み込んでくれるような、一面真っ白の摩訶不思議な空間はあの世への入り口みたいなものなのだろうか。なんてファンタジーを想像してみた。
すると美女がフフッと笑みを浮かべて答えを返してくれる。
「あなたのご想像の通りですよ?」
「んじゃあさっきから勝手に人の思考を読み取っているあんたはさしずめ閻魔様ってところか?」
散々心の中で美女や美人といい続けていた恥ずかしさから少しの嫌味を交えて尋ねてみた。
「信仰や宗教で呼び名は様々ですが、人の生前の罪を裁く、魂を管理する、という仕事から考えれば間違いではないでしょう」
嫌味は華麗にスルーされたので開き直る事にしてみる。
「しっかし、こんな美人な閻魔なら、誰も舌抜かれても文句は言わないんじゃないか?」
「私は生前の罪を裁いて、どんな罰にするのかを決定するだけですから、実際舌を抜くのはイカついゴリゴリマッチョの鬼さん達ですけどね!」
素直に美人と褒めても特に反応はなく再びスルーされた上に、恐い回答が怖いくらいの満面の笑みで返された。
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