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ナギの脅しに屈した俺は泣く泣く魔王のたまごを孵化させる為、未公開エリアであるルクセリアに向かうのだった。
魔王のたまごを所有しているとマップ上が赤色表示になっている場所がある。
そこがルクセリアだろう。
ナギのマップデータには存在していない、まさに未公開エリアだ。
つまりこのマップデータを持っているのはLOプレイヤーの中でも俺だけということだな。
……そう考えると確かにほんのりとした優越感がある。
ナギほどの廃人ではないにしても、ドキドキワクワク感はある。
大陸の東側にあるデルファイアの森。
マップ上は、この森の奥が行き止まりになっている。
俺達は森を抜けて、空まで伸びている崖に手をかざした。
本来はここで行き止まりだ。プレイヤーはこの範囲内で狩りをする。
しかし俺達はこの先に行けるんだ。
そう。
俺達は……。
「どうした? 早く入ってしまえよ。つーか入れ」
「……ああ」
俺を脅したナギくんってば、ちゃっかり魔王軍に志願してくれちゃいました。
つまり協力して新しい魔王を育てるってことだな。
まあいいけど。
俺としても一人じゃ手に余るクエストだし。
この廃人が協力してくれるというのならこれ以上心強いことはない。
『魔王のたまご所持プレイヤーであることを確認しました。未公開エリアへの立入を許可します。ルクセリアへようこそ』
そんな音声ガイダンスと共に崖のオブジェクトが崩れていく。
「おお」
「すげー」
その向こうに広がっていたのは、デルファイアの森よりも更に広大な森と、遙か遠くに聳え立つ城だった。
「『魔王城』って奴かな?」
「だと思うぞ。しばらくはあそこがオレ達の本拠地になるだろうな」
「そっかー……」
ちょっと前まで一般的なプレイヤーホームが本拠地だったのに、気が付けば城持ちだよ。
まあ楽しそうだからいいけど。
「じゃあさっそく向かうか」
「そうだな。この辺りはモンスターも出ないだろうし」
「出ないのか?」
「多分な。この辺りでモンスターが徘徊しだすのは、討伐クエストが発生してからだと思うぞ。魔王も生まれていない段階で、たまごの所持者であるオレ達が死に戻りしても意味がない。少なくとも魔王城に辿り着くまで死ぬようなトラップは無いと考えていいだろう」
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