第1章

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 突発的に京都旅行へ行きたくなることがあるし、実は隣の県だったりするので鈍行でちょくちょく行ったりしているのだが、それでも旅費は結構馬鹿にならない。  VRワールドで京都風が楽しめるのならこの欲求も多少収まるかもしれない。 「じゃあ京都風に決定。街の名前はまだ保留」  ぽちっとな。  マニアじゃないけどやっぱり京都が好きだ。  大学受験で京都を選んでいれば良かったと後悔したほどに。 「おお!」 「すげえ! 城まで変化したぞ!」  街並みはがらりと変わった。 「………………」 「おーい。目がキラキラしてんぞー……」 「………………」  キラキラキラキラ……しているかもしれない。  ゲームデザイナーの腕を褒めてあげたい。  これはまさしくアレンジされた京都の街!  俺が好きな石畳とか瓦屋根とか、犬矢来とか駒寄席とか……!  祗園の花見小路な風景があちこちに……!!  ハラショー! 「魔王城もすっかり二条城っぽくなってるなぁ……」 「それでもいい! 魔王城万歳! 俺ここに来て良かった!」 「……喜ぶ部分が明らかに違うけどな」  やれやれと肩を竦めるナギをよそに、俺は二条城……じゃなくて魔王城へとスキップで向かうのだった。 「おーっほっほっほっほっ♪」 「おいおい……鞭振るってないのに高笑いが出てんぞ」 「おっと。つい興奮して」 「興奮したら出るのかその高笑いは……」  呆れるのを通り越してドン引き状態のナギだった。  俺のキャラ立ちも段々とヤバい方向に傾いてきているかもしれない。  しかしゲーム内のオブジェクトとは思えないぐらいグラフィックの完成度が高いな。  マジで歩いているだけで楽しい。  レベリングとか忘れそう。  魔王城に辿り着いた。  ウィンドウを表示させて手を翳すと、 『ユーザー認証完了しました。魔王城へようこそ』  がらがらと跳ね橋が降りてきた。  本格的で素晴らしい。  これからここが俺達の本拠地になるかと思うとやっぱりワクワクだ。  庭園を抜けて城の中へ入る。  二の丸とか本殿とか細かい知識はないので、城の中とだけ表現しておく。  京都とか城とか好きだけど、歴史が好きってわけじゃないんだなこれが。  単純になんとなく雰囲気が好きってだけなんだ。
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