ランプ

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 男の手元にはさっきまで、自分が閉じ込められていたランプが握られていた。ランプは神秘的な雰囲気をかもしだし男に擦るよう縋っていたが、男は再びこれを使う気にはなれなかった。同じことを繰り返したくない。こんなランプはさっさと手放した方が良いに決まっている。男は、Y氏が買った骨董屋にランプを売ることにした。手元に置いておけば、きっと、また使いたくなってしまう。  男はランプを抱えて骨董屋まで行くと、店を閉めようとしていた主人を呼び止め、ランプを買うよう迫った。主人は一瞬、戸惑ったが、あくまで商売だと割り切って、ランプを男から買い取った。二束三文でランプは売れ、端金を手に男は久々の家へと帰っていった。  一方、ランプを買い取った主人は溜め息をついていた。 「いったい、このランプは何なんだ。誰かが買っていっても、しばらくすると、前の前に買った客が売却しにやってくる。全く、訳が分からない」  ランプの事情を知らぬ主人にとって、悩みの種であった。ランプに聞こうとしても返事をする訳もない。外から差し込んできた月明かりに照らされて、ランプは薄汚れた身体を鈍く光らせるだけだった。
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