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突然、ランプが光り出した。何事かとY氏が驚き、ランプを手放すと、注ぎ口からモクモクと煙りが出てきたではないか。「まさか」といった様子で、呆然としながらランプを見ていると、煙りは次第に形を成していくではないか。煙りはやがて、人の形を成すと、
「お呼びいただきありがとうございます」
と、人の形となった煙りから声がした。これが、夢や幻覚でなければ、疑いなき本物の魔法のランプである。
人の形となった煙りは次第に色づき始めた。
「驚きになるのも無理はない。私は魔法のランプに住む者」
「ほ、本当に、本当に本物なのか?まさか、現代社会でこんなことが・・・」
「これは、夢ではありません。現実です。現に私は魔法のランプで暮らしています」
とうとう、煙りは魔人となった。ところが、現れた魔人はY氏の想像を裏切っていた。絵本のイメージが強いが、魔人といえば、頭にターバンを巻いた色黒の男だと思っていた。しかし、現れた魔神は全然、違っていた。意外にも、現代人に近い顔をしていた。いや、そもそもインド人らしさが、どこにもなかった。眼鏡に背広、整った前髪。これでは、日本のサラリーマンではないか。
「これは、予想外の姿だ」
Y氏は思わず感想を呟いてしまった。すぐに、気付いて口を塞いだ。相手は、魔人だ。余計なことを喋って、気分を害されてしまっては、元の子もない。呪いでもかけられたら大変だ。けれど、魔人は少しも嫌そうな顔をしなかった。むしろ、予想通りの反応と嬉しそうにしていた。
「アナタが思い描いているのは、昔話で語られている魔人の姿です。言うならば、昔の姿です。時代の流れに合わせて、近代的な姿になるのも魔人の勤めです」
どうやら、魔人は人の心をある程度読む力を持っているようだ。Y氏の疑問に答えるように説明してくれた。
「本当に本物なんだな」
「そうです。では、定番の願いを・・・」
「ん?ちょっと、待て」
魔人の言葉を遮るようにY氏は口を挟んできた。
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