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その瞬間、浜谷さんはニヤリと笑い、
「月斗がムカつくから、仕返し。」
と呟き、私をグッと引き寄せ、唇ギリギリの隣にキスを落とす。
ギリギリだったので、唇には当たってないが、向かい側にいる月斗さんには、本気でキスしているように見えたのだろう。
……眉間に青白い筋が浮かんでいる。
「じゃ、待ったねぇ!」
浜谷さんは、ゆらりゆらりと近づいてくる月斗さんから逃げるように、お店から出て行った。
……最高で、最悪なお土産を置いていって。
浜谷さんが、お店を出て行くと、シーンと静まり返る。
痛い!沈黙は痛い!
「つ、月斗さん?お店のこと、やっちゃいましょ?」
少し上擦った声で、今あったことをなかったことにして、そう言った。
けれど、
「…今日は閉めます。…愛する彼女が、どこぞのくそ底辺野郎に汚されてしまいましたから。」
極上の笑みを浮かべ、こちらに歩いてくる。
「え?い、やぁ…困るんじゃないんですか?今日の予約とか…」
「ないです。」
「あ!新しく時計買いに来る人とか!」
「他のお店に行ってもらいます。」
「ダメですよ!それ!」
何しているんだろう。
私よ、見て。
あの極上スマイルは、完全にヤバイスマイルでしょう?
そうしている間にも、月斗さんは私の腕を掴んでいる。
そして、
「…今日はこのまま、僕の家ですね。…汚されたトコロ、全て綺麗にしてあげます。」
深い意味がありそうなそのセリフに、私は何も言えなくなった。
「…勿論、他のトコロもたっぷり可愛がってあげますから。」
…綺麗にするんですよね?
言葉の矛盾を感じた私だか、敢えて何も言わない。
言ったら、今より酷いことになりそうだからだ。
「さ?帰りましょうか?」
「は、い……」
こうして、わたしは付き合って初めて月斗さんのお家に行き、月斗さんと初めての夜を過ごした-------------------
【美胡と月斗の優雅な日常 完】
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