14人が本棚に入れています
本棚に追加
わたしの身体はチョコレートの力をもらっている。
もちろん、それは比喩で、体がチョコレートから力をもらっているなど、普通は考えにくい。
けれど、わたしの身体はチョコレートの力をもらっていると言える。
「ねぇねぇ!あたしのポーチどっかいっちゃったの!探してくんない?」
クラスメイトの派手組の女子だ。
顔の前に手を合わせてお願いしてくる。
そう。ここでわたしの出番なのだ。
「いいよ。どこら辺でなくした?」
わたしは席から立ち上がり、派手女からポーチの行方を訊く。
「んーとねぇ…体育で着替えた後になくなったから、更衣室ぐらいかなぁ?」
派手女は、可愛くもない顔を傾けながら答える。
「わかった。…ちょっと待って。」
わたしは制服のポケットから、いつも常備している“チョコレート”を取り出す。
そして、それを口に入れる。
チョコレートの甘みと苦味が、交互に口の中で分散されて…
わたしは派手女に向き直り、
「更衣室じゃなくて体育館だよ、落としたのは。あなたは、体育のバレーで髪が崩れたから、体育館にポーチを持って行った。そして、次の授業の移動でバタバタしている内に、体育館にポーチを置きっ放しにしてしまった。」
いくつかの情報の元、そう推理した。
……簡単すぎて、話にもならない。
最初のコメントを投稿しよう!