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「咲って、箸の持ち方綺麗だよねー!」 「そう?ありがと。」 毎日のお昼休み。 必ずこのセリフを聞く。 「いいなぁー!綺麗に持つ人って、内面も綺麗っぽく見えることない?」 ……それは、私自身が綺麗に見えないということですか? どうやら、自分の失言には気付いていないようだ。 隠れるように、はぁ、溜息をつく。 てか、日本人なんだから、これぐらい出来なきゃダメでしょ? 私は、友達が持つ箸の持ち方を見てそう考える。 ……あれでモノが持てるのだろうか? だか、実際持てているのだから、不思議だ。 私はもう一度、はぁ、と溜息をついて、箸を動かす。 ん。この卵焼き上出来。 自分で作っているお弁当に、自分で評価を付ける。 こういうことって、結構大切だと思う。 だって、自分に自信が持てなきゃ、何事も挑戦なんて、出来ない。 「ねぇ!あたしにも持ち方教えてー!」 ドンッ!と、悪気はない彼女だろうが、私の腕に自分の手を乗せる。 その拍子で、わたしが持っていた箸が手から滑り落ちた。 「あ…」 カシャン!と小さな音を立てて、床に転げ落ちてしまった。 「あっ!ゴメン!あたしのせいだよね?」 彼女はオロオロしながら、私に謝ってくれる。
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