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「いいよ、大丈夫。ちょっと洗ってくるね。」 箸を拾い上げようと、席を立った瞬間、サッと、目の前に落ちていた箸が消えた。 …いや、正確には誰かに拾い上げられた。 「洗って来てあげる。」 「え?」 呆然としている合間にも、私の箸を持った生徒は、スタスタと教室から出て行く。 「え?ちょっ…!ちょっと待って!」 その後ろ姿を、私は追いかけた。 ------------------- --------------------------------- 「あれ?俺が洗ってあげるって言わなかったっけ?」 「いや……言ったけど。普通、人の箸…しかも、落としたやつを触らないでしょ?」 「いいよ、別に。上原のだし。」 拾ってくれた生徒、永井くんは、水道でジャージャーと私の箸を洗ってくれている。 「やでしょ?人の箸なんか触るの。」 「だから、上原のはいいって。」 「………意味分かんない。」 不可解な答えを返してくる永井くんは、クラスでは不思議ちゃんならぬ、不思議くんだ。 あんまり喋ったことないのに、どうして拾ってくれたんだろう。
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