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「いいよ、大丈夫。ちょっと洗ってくるね。」
箸を拾い上げようと、席を立った瞬間、サッと、目の前に落ちていた箸が消えた。
…いや、正確には誰かに拾い上げられた。
「洗って来てあげる。」
「え?」
呆然としている合間にも、私の箸を持った生徒は、スタスタと教室から出て行く。
「え?ちょっ…!ちょっと待って!」
その後ろ姿を、私は追いかけた。
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「あれ?俺が洗ってあげるって言わなかったっけ?」
「いや……言ったけど。普通、人の箸…しかも、落としたやつを触らないでしょ?」
「いいよ、別に。上原のだし。」
拾ってくれた生徒、永井くんは、水道でジャージャーと私の箸を洗ってくれている。
「やでしょ?人の箸なんか触るの。」
「だから、上原のはいいって。」
「………意味分かんない。」
不可解な答えを返してくる永井くんは、クラスでは不思議ちゃんならぬ、不思議くんだ。
あんまり喋ったことないのに、どうして拾ってくれたんだろう。
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