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「……あー、逃げねぇから手首だけ解け、つっても無理か?」
ポロシャツの男は私を通し、フランス人形を睨みながら言った。
言ってみた、という感じは否めない。
『申し訳ございませんが、その要望にお応えする事は出来かねます』
フランス人形は淡々と要点だけを答え、またぷつりと声を切った。
もう始まっていた。
だからもう、フランス人形は質問された事にしか答えない。
「おっけー、言ってみただけ。まぁ、どんな要望が通るかわかんねぇからこれからも俺は言うけどな。お前は何もねぇのかよ、パンツの姉ちゃん」
パンツの姉ちゃん、の言葉にスキニーパンツの女はゆっくりと顏を上げた。
「……うちの事? パンツて」
「細身のパンツを履いた姉ちゃんじゃ呼びにくいだろ? だからパンツの姉ちゃん。本当なら苗字くらい言いたいとこだけどよ、それだと危ねぇ。適当な名前が当たっちまって偶然に票が完成、投票ってなり兼ねねぇからな」
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