第1章

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制服に袖を通し、鏡で全身を確認する。 きゅっと唇を噛みしめて呟く。 「大丈夫、大丈夫」 そう、大丈夫。 ちゃんと、笑えてる。 そっとポケットに手を当ててふくらみを確認する。 希ちゃんのハーフシューズの入った小さなポーチは、私のお守りになっていた。 新学期も始まって、またいつもの日常が戻った。 好きな気持ちをなかったことにはできないから、まだジリジリと焼かれるような痛みからは解放されない。 先生のことを想うだけで、胸一杯に昇華できない気持ちがあふれる。 先生の背中を見つけるだけで、息苦しくなるけど、ごましながらでも歩かなきゃ。 できるだけ、心を鈍く鈍く……。 私は、ーーーーー泣かない。
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