第1章

7/39
232人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
ドカッとあぐらをかいて後ろ手をつく柴田君に、采女が頷く。 「見ていただきたいものがあって」 私たちに冷たい飲み物を配り終えると、ローテーブルの上にノートパソコンを置き、起動させた。 「手がかりがないかと思って、別の高校に行った中学の同級生に聞いて回ったの。 『3年生にバンドやってる健太さんと有弥さんっていない?』って」 「そしたら!?」 テーブルに身を乗り出して先を急ぐ柴田君。 「二人とも明新高校だったわ」 「へぇ………1年生でも知ってるなんて、有名人なんだね」 「それが、違うのよ」 形のいい唇を噛みしめて声のトーンが下がる采女に心拍数があがる。 「全然目立つタイプじゃなかったそうなんだけど、6月くらいから急に持ち物が派手になって髪の毛染めたり、ピアスあけたり………。 学校でトラブル起こすようになったそうよ」 あの日の不快なほどギラギラした有弥さんを思い出して、納得する。 「うん、私も最初に会ったときとあまりにも印象が違って、言葉が出なかった」 「トラブルっていうのも、いきなり奇声あげて走るとか、教室の窓から机投げ捨てるみたいな……。 別の意味で怖い感じだったんだって」 「あー……確かに。 俺もクスリやってんのかなって思うくらい、気持ちわりーテンションだったなぁ」 柴田君が背伸びをしながら、あのときの印象を語った。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!