紡ぐ者

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結局、藤堂君はベッド 私は下に布団を敷いて寝る事になった 「俺が下降りるから」 とか言っていたが問答無用 「両手両足縛り付けるよ!!」 と脅したら大人しくなった きっちりと、しつける所はしつけないといけない 明かりを落として布団に入ると一息吐いた 疲れだか何だかよく分からない物が体から抜けていく 思えば色々あった 藤堂君を避け続けた結果、再会した瞬間に倒れて救急搬送 あの時は…もう会えなくなるんじゃないかと思った けれども自分の気持ちに気づいて素直になれて…今、ここにいる 「雪野…」 私は藤堂君の声に反応するように顔を上げた 「キスしていい…?」 「ダメ」 その瞬間、藤堂君はどこか寂しそうに頭を垂れた 「止まらなくなるでしょ…」 それは私も同じ…止まらなくなった先が怖い 「そうだな」 そう言うと、藤堂君は、ははっ…と自虐的に笑った 「ごめんね…我慢ばかりさせて」 「いいよ、大丈夫だから」 と、優しく笑ったが…次の瞬間緩やかに男の顔になった 「…って嘘、本当は今すぐにでも雪野に触れたい、抱き締めて、キスして…」 言いながら藤堂君は次第に苦しそうに息を荒らげた 今まで一体どれだけ辛い思いをさせていたのだろう 自分の欲求ばかり押し付けて… 藤堂君の気持ちなんて何も考えてもいない 「ゴメン、こんなこと言って…嫌だろ?」 「嫌じゃない!!それが藤堂君の本音なら…私が受け入れられないだけで…」 気持ちは受け入れてるつもりだ、ただ…その先に踏み込めないだけで…
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