紡ぐ者

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エレベーターに乗ると、藤堂君の手が触れた 今、ここにいるのは私と藤堂君だけ 触れいただけだった指先が、するりと指の間に絡まる これだけの事なのに私の心臓は波打って仕方がない 「今日の夜会える?」 藤堂君が視線を落として聞いてきた 「うーん…分からない、また連絡するね」 毎日会いたい…とは思うけれども、けじめというか、どこかで線引きしておきたい 昨日言ってくれた事は嘘じゃないと思う…けれども真実を知り、一歩踏み出せないでいるのも本当だ 『愛してる』 その言葉で十分なのかもしれない けれども確かな何かが欲しい 繋いだ指先はそのまま 斜め上を向くと、藤堂君が優しく笑った
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