イチゴと珈琲

2/42
782人が本棚に入れています
本棚に追加
/259ページ
カチカチカチカチ カチカチカチカチ 静かな部屋にキーボードを打つ音だけが輪唱する カチカチ カチカチ 「手、止めなくていいから そのまま聞いて」 そう言って上司の 梯 晃が隣に腰掛け 机に資料を並べはじめた 「明日の午後までにまとめて」 そう言いながら彼の手は私の太股に滑り込んでくる 「はい。」 スルスルと滑り込んで 芯を捕らえようとする 「よろしく」 何事もなかったかのように ひらりと向きを変え立ち去る 梯は背が高いというだけで 別段、格好いいわけでもない。 私の男前ランキングのなかでの評価は 並だ。 観察するかぎり 頭がキレるわけでもない システムに関して長けているだけで 知識が豊富な訳でもない ズル賢い 男から嫌われるタイプのそんな男だ  
/259ページ

最初のコメントを投稿しよう!