短い旅の終わり

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豊と2人で訪れたヴィータの新店。 新たにオープンしたこの新千歳空港店は、ヴィータの直営店の中では最も規模が大きく、店舗横の工場前には既に人だかりができていた。 「都那、こっちに試食があるよ!」 試食コーナーを見つけた豊が、私の手を引きそちらに誘導する。 店内はお土産を買う観光客や甘い誘惑に魅せられた若い女性客で賑わい、商品を手にするのもやっとの状態だった。 「やった!最後の2つ、ゲット!」 人混みの中に長い腕を伸ばし、豊が試食品のグラチョコを2つ掴み取る。 「はい、都那の分もあるよ。」 そう言って豊は、手探りで掴んだグラチョコの破片を1つ私に手渡してくれた。 「ありがとう。」 豊からグラチョコを受け取り、早速口の中に入れる。 頬張った瞬間チョコレートとフルーツリキュールの風味が口の中に広がり、噛めばグラノーラの歯応えがザクザクと頬骨を伝った。
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