第一章

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肌を心地よい風が撫でていく。 クラビスという山間に築かれた盆地の村で、今日もわんぱくな子供達が兵士を目指し、剣を模した木の棒で同い年の子供達と稽古に励んでいる。 そんな子供達には混ざらず、少年はそれを眺めているだけだった。その横には、村の女の子達が騒がしく好みの男の子の活躍に熱を上げている。 少年はここに吹き込む山の風が好きだった。 少年が彼等を見ているのは、暇だからではない。少年とて、混ざれるなら混ざりたいが、ただでさえ少ない休憩時間に疲れる真似はしたくないので、こうして食事をしながら見るだけにしている。 少年の家は厳しかった。 家計では無い。 両親の教育がだ。 午前中は勉強。午後からは家の手伝い。剣の稽古は、父親が仕事から帰って来てから付けてくれる。 時間にすれば午後三時から五時までしか、少年には遊ぶ時間は無かった。 しかし、そのお陰で少年は同年代の男の子より賢く、強かった。顔は大人しそうな印象で、事実少年は大人しい子供だった。 彼が柔らかい笑顔を向けていると、後ろに立つ気配を感じた。 振り返って見ると 「あっ、リオン。またここにいたの」 「やぁ、リリス。どうしたの?」 幼馴染の女の子リリスが、仁王立ちでそこにいる。
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