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「…ふえっふぉう」
リリスの手首を掴み、自分の方に引き寄せる。リリスは突然の事に、リオンに倒れかかり、その身をリオンに受け止められる。
否。
抱き締められる。
「ちょっと、リオン。何してるの!?」
リリスは女の子だ。なんと言っても、男の子に抱き締められる経験なんてモノはリオンにしか無い。
しかも、今日は周りに人がいる。
とんでもなく恥ずかしい筈だ。
「リリス。本当にごめん。どうか、許してほしい」
「それより、離して。恥ずかしいでしょ…」
「許してくれる?」
抱き締めたまま、顔だけをリリスに向ける。
「分かった。許す。許すから、離して」
「本当に?」
「本当だって、許してあげるから止めて…」
顔を真っ赤に染めたリリスに、目を向けて無邪気に笑うリオン。そして、自分の腕から彼女を解放すると、リリスの目を見て声を渡す。
「やっぱり、リリスは優しいね。僕はそんなリリスが大好きだよ」
「……!?」
なんだかんだ言っていたリリスだったが、こう直球を投げられるのは弱い。しかも二人は幼馴染みであり、許嫁の関係でもある。
「リオン。あのね…」
「何?」
「ちゃんと私をお嫁さんにしてね」
この言葉も何度目かと、周りが熱の籠った視線を絡ませる二人を呆れた顔で祝福する。
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