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「リオン!」
懐かしい声がした。
懐かしくも、会いたく無い者の声だ。
リオンと変わらぬ淡い金色の髪。顔立ちも綺麗に整っている方だ。十人が十人、並んだ二人を見れば兄弟だと分かる筈だが、今のリオンの目は憎悪に満ちていて、同じ顔立ちだと認識し辛い。
「……お前か。村を捨てた裏切り者が何の用だ?」
「貴様、隊長に向かって何て口の聞…」
横の騎士の首に、抜き放った剣先を向ける。
「うるせぇよ。デカ物。部外者は黙ってろ。それで、滅んだ村を見て何か言い残す事はあるか?」
「きさ…」
「ハロルド。引いてくれ。彼は私の弟だ」
そうリオン似の男が口にすると、リオンの剣が一閃。兄の鎧に一筋の傷を付ける。
リオンの剣撃に押され、兄は騎上より落馬する。
「なっ!」
「隊長!」
「リオン。貴様!」
部下の前で恥を掻がされた事と、本気で斬りつけられた事に、兄は怒りを見せた。
「お前が兄だったのは昔の事だ。裏切り者の上に、役立たずが見下ろしてんじゃねぇよ」
「貴様!」
「誰が役立たずだ。言ってみろ」
剣に手を掛ける騎士達に剣先を向ける。
「誰が見ても、お前等だろ」
「貴様~…許さん」
「やめとけ。俺は、そこの裏切り者より上だ。お前等じゃ蝿と同じだ」
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