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騎士相手に酷い暴言を吐きながら、リオンは冷めた目で見ている。兄は眉を動かしただけだが、ハロルドは我慢出来なかった様で、騎上より降りると剣を抜いた。
「隊長より上だと、ふざけるのも大概にせんか!」
「うっかり殺しても恨むなよ。俺はお前等も恨んでるからな」
巨漢の騎士ハロルドの上段が、リオンに振り降ろされる。リオンはガラ空きの懐に飛び込み、足払いを掛ける。
すてーん…と転んだハロルドの首に、剣先をチクっと刺す。
「いいか。俺が斬りたいのは、お前じゃ無い。お前だレオン」
実の兄に剣先を向ける。
周りの騎士達は、どうしようかと困った表情だ。
賊では無い村人の生き残りが、自分達の隊長の弟なのだが、隊長を殺す様な発言ばかりしている。
そんなリオンが剣を鞘に収めると、埋葬を再開した。
「だが、リリスが悲しむ事はしない」
「…リリス。リリスは?」
レオンが彼女の名を口にした瞬間。リオンはレオンに手にしていたスコップを投げ付ける。
「お前が、お前なんかが…彼女の名を口にするな」
額から血を滲ませたレオンに、ハロルドが慌てている。
「お前が村を捨てた後、家族がどんな暮らしをしていたか。少しは考えたか?」
「……」
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